【株式会社 八善堂 代表取締役社長 片平善弘】
老後のこと 50代の半ばくらいからだろうか、不意に老後の生活に不安を覚えるようになった。大学に通う三人の子供たちの学費や生活費の仕送り、何気に全てを使い切ってしまう我が家の消費習慣に、漠然とした危機感を抱くようになった。巷では老後破産や高齢者世帯の生活保護受給の急増が話題になっており、週刊誌や新刊書もこの手の書物が盛んに出版されるようになった。老後を考える気弱な我々に、これでもかというくらい不安を煽り続けている。 実際 私たちが携わる葬祭業の現場においても、生活困窮者の方のご葬儀や、誰にも看取られず人知れず亡くなられている孤独死のご依頼が、年を追うごとに増え続けている。この業界にいる者であれば誰しもが認めざるを得ない現実であろう。 長生きすることはすばらしい事ではあろうが、逆にそれが老後の足枷となってしまっている時代なのかも知れない。 こんな不安を抱きながらFPの友人に教えを乞うてみた。指摘されたのは ①保険の見直し ②確定拠出年金の積み立て ③小規模企業共済の加入 以上3点を強力に勧められた。ただ私なりに調べてみると、保険の見直しは持病を抱える私にとってはなかなか難しいし、確定拠出年金は年齢制限の60歳をとうに超えている。小規模企業共済は税制面でかなりの優遇措置があるらしいが、原則20年以上納めない限り元本は戻ってこないらしい。 結局は年金受給を出来るだけ先送りにし、その間は働き続けた方が良さそうである。現役であり続けることの方が、老後の経済的不安を少しでも緩和してくれるのかも知れない。 だとしたら、以前からカミさんに常々言われている『死ぬまで働きなさい!』とは、無慈悲な酷使宣言なんかではなく、私たちにとっては究極の愛情表現なのかも知れない。
(2019.09)